暗号資産(仮想通貨)の損益計算に必要な資料3つ

はじめに

暗号資産(仮想通貨)取引を行い、確定申告を行うためには、まずは自身の損益計算が必要になります。

これは、暗号資産取引の取引履歴等を分析し、年間の暗号資産での利益(所得)がいくらかになるのかを計算する手続きとなります。

損益計算を実施しなければそもそも確定申告が必要であるかどうかの判定も行うことができません。

さらに、仮に赤字であったとしても損益計算は必要です。

これは、次年度以降の損益計算を実施するためには、前年度以前の損益計算が必要であるためです。

それでは、実際に損益計算を行うためには、どのような資料が必要になるでしょうか。

ここでは、暗号資産(仮想通貨)の損益計算を行うための必要となる資料を一覧で解説します。

なお、この記事においては取引履歴を一つ一つ分析しての損益計算を想定しており、年末年始で全部利確し、利確後の残高で損益計算を実施するやり方ではありません。

また、損益計算の分析は非常に労力がかかるので、クリプタクトなどの損益計算ソフトを使っての損益計算の実施をベースにしております。手動で計算する場合は、さらに取引ごとの暗号資産の価格などの情報が必要になりますので、ご留意ください。

【この記事のポイント】

  • 暗号資産(仮想通貨)の損益計算のために必要な資料を解説
  • 専門家に損益計算を依頼するとしても、ここに掲載の資料や情報は必要になる

必要資料その①:取引所・ウォレットの情報

まず、損益計算のために最も大事なのは取引所とウォレットの情報です。

利用している取引所及びウォレットをもれなく抽出する必要があります。

取引所やウォレットが自身のものでながら、損益計算の対象外となってしまっている場合は、申告漏れになり、税金の金額が間違っていることになります。

申告漏れとなった結果、罰則が発生する脱税になる可能性がありますので、自身が利用している取引所とウォレットをもれなくピックアップするようにしましょう。

必要資料その①の詳細

・利用している取引所の一覧
・利用している取引所から取引履歴の出力
・利用しているウォレットアプリのウォレットアドレス一覧
・利用しているコールドウォレットの情報
・損益計算ソフトが対応していないチェーンについて取引履歴の出力
・オフチェーンのブロックチェーンゲームに関しての取引履歴や取引メモ

必要資料その②:取引履歴の詳細

その次に、実際の取引履歴の詳細が必要になります。

ブロックチェーン技術の仕組み上、すべてのブロックチェーン上の取引は可視化され、誰でも閲覧できるようになっています。ですが、その取引の性質については、たとえ専門家であっても内容が不明な部分があります

例えば、特定のウォレットアドレスへのETHの送金であったとしても、それは、①自身のウォレット間の送金②友人のウォレットへ寄付③何かしらの業務の対価として送金④ブリッジの実施・・・など多くのパターンが想定されるのです。

現状、ウォレットアドレスとKYC(身分情報)が紐づけられていないため、送金の内容の理解が非常に難しく、一つのトランザクションの内容を理解できないことが多いのです。

トランザクションの性質によって会計処理は異なることとなるため、取引履歴の詳細が分からなければ損益計算を実施することはできないこととなります。

そのため、実際に取引履歴の詳細情報が必要になります。

必要資料その②の詳細

・送金先のウォレットの情報(自身、友人、運営など)、送金目的
・スキャムコイン(詐欺コイン)の受領
・ブリッジなどの内容
・暗号資産の盗難、紛失、詐欺など
・暗号資産決済の物品やサービスの購入

必要資料その③:年末でのコイン枚数の残高、NFTの数量

最後に、年末時点でのコインの枚数やNFTの数量の情報が必要になります。

この資料は以下の2つの目的のために必要となります。

目的その①:取引履歴が網羅的に出力されているか確認する

まずは、取引履歴の確認となります。

全ての取引履歴が正しく反映され、計算の対象となっているのであれば、計算上のコインの枚数と、実際に保有しているコインの枚数が一致します。

ですが、通常は計算上のコインの枚数と、実際のコインの枚数とは一致しないことが多く、特定期間の取引履歴が漏れていたり、特定の取引所の取引履歴が出力されていないなどが多いです。

しっかりと全ての取引履歴が計算対象になっているかを確認するために、年末時点でのコインの枚数とNFTの数量が必要になります。

目的その②:取引履歴に反映されない取引がないかを確認する

さらに、一部の取引所の取引履歴に関しては、取引履歴に反映されていない取引が存在します。

例えば、エアドロップ(特定の条件を満たした際に、ボーナスとして付与されるコイン)は取引履歴に反映されないなどがあります。

計算上のコインの枚数と、実際に保有しているコインとを比較することで、エアドロップなどの取引履歴に反映されない取引を適切にピックアップすることができるのです。

また、年末でのコイン枚数やNFT数量を見直しする際に、「不要な暗号資産やNFTを売却し、年末時点でのポートフォリオを整理する」ことも推奨しています。

これは、年末時点でのコインの枚数・取得価額、NFTの数量・取得価額は来年以降の損益計算の基礎となるためです。

まとめ

以上が、損益計算のために必要となる資料や情報となります。

暗号資産(仮想通貨)の損益計算は非常に複雑です。仮にこの情報があったとしても損益計算には多くの時間や労力がかかることとなります。

正しく損益計算を実施しないことには、納めるべき税金の額も算定することができないため、暗号資産(仮想通貨)投資をされている方は損益計算が必須です。

損益計算を実施し、20万円以上の利益が生じている場合は、原則として確定申告が必要になりますので、ご留意ください。

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ABOUT US
村上ゆういち魔界の税理士
公認会計士・税理士 公認会計士として大手監査法人、上場企業、会計事務所に勤務後、「村上裕一公認会計士事務所」を開業。 開業後は、暗号資産(仮想通貨)やNFT、ブロックチェーンゲームを専門とする税務を中心に活動している。 魔界(仮想通貨投資の深い部分)投資も自ら実施しており、通称「魔界の税理士」(商標登録済)